〈駄文〉ガラス玉の話

過去の自分は自分じゃない
1秒前の自分は全くの他人

思い出はガラス玉
思いだしたければ覗けばいい
時間が経つにつれ歪んだ記憶になるでしょうが
忘れたければ割ればいい
割っても欠片は心に刺さったままでしょうが

綺麗なものは集めておいて
時々1人で眺めるのも良いでしょう
汚れたものは離しておいて
時々1人で磨くのも良いでしょう

ある日突然消えるかもしれない
過去の自分がいなくなるかもしれない
過去に生まれたガラス玉も

楽しい記憶は明るく輝く
春の野を舞う蝶のように
苦しい記憶は弱々しく瞬く
夏の暑さに焦がれる羽虫のように
美しい記憶は常に煌めく
秋の地に散る銀杏のように
辛い記憶は暗く光らぬ
冬の厳静な森林のように

そして今日もまた、
微かに煌めく群青の
冬の夜空のようなガラス玉が
心に生まれた